【往還今昔】

 
 往還とは行き来する道、街道のことですが
挙母から名古屋へ至る代表的な往還は、今の
153号線とほぼ同じような道筋で、広久手
本新、本地、千足を抜けていました。
 人馬が三々五々通っていた頃、この往還は
幅員約7m、坂や曲折の多い地道で、日照
りが続けば土埃、雨が降ればぬかるんで
歩行も困難な悪路でした。
漬物石ほどの大石を泥道に投入し、
人や牛馬車によって自然に踏み込まれる
のを待つのが唯一のぬかるみ対策で、
往還の中心線は凸凹で蒲鉾のように盛り
上がり、たまに走る車や牛馬車は斜めに
傾きながらのろのろと通行していました。
 もちろん歩車道の区別もないので、挙母の
町へ出る人々は石の少ない道端を選び、
7qの道のりを黙々と歩いたといいます。

                                            
沿道は民家も少なく、木々と草むらと畑 
が続き、狐狸が出ると噂される場所があ    
ちこちにあり、日が暮れると人影も無く    
なる長く寂しい道でした。
 墓地の前を通ると墓石やお塔婆が月明
かりに浮き出され薄気味が悪く、焼き場
の残り火が燃え、焦げくさい臭いが漂う
夜は一層空恐ろしく感じたといいます。
 あのころから50年が過ぎました。
 石ぼこの往還は国道に移管され、最新
の舗装がなされ、歩道やガードレール
や中央分離帯まで設けられ近代的に変容
しました。                       
  153号線道路とよばれて幅員40m、
一日の走行車数3万台増とのこと。
 しかし懐かしい往還という名で呼ぶに    
はあまりにも趣がないような気がしませ     
んか


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