はじめに


 逢妻女川にねこ柳が 柔らかな芽を吹き、赤紫の野あざみの花が 咲き乱れるころ 
サイタ  サイタ  サクラガ  サイタ、コイ  コイ  シロコイ  
新しい一年生が先生のあとについて 歌でもうたうように 大声を張り上げた国語の時間    
                                               
 所々穴のあいた板橋から われ先に女川に飛び込み 
水しぶきをあげて 魚を追いかけた夏の日々 
遊び疲れて家路を辿るころ 
川面をピョンピョンはね躍るシラハエの銀鱗は
茜色に染まっていた 

 秋はなんといっても里山が一番                 
アオハツ シメジ アシナガ マツタケ…
目を凝らして歩いた きのこ採り 

赤いワンゴシキ 青いシャセンボ…
探しあてた木の実は 最高のおやつで
唇に付いた木の実の色は隠せようもなかった
 
 冬は寒かった 
カン蹴り かくれんぼ  コマ回し…
隣り村のけんか相手を待ち伏せての石合戦 
逃げる者も追う者も つかの間もじっとしてはいなかった 
気まぐれな北風に 絶えず向きをかえる焚き火の煙 
綿入れのはんてんの袖口は、どの子もピカピカ ツルツルだったっけ 

 私たちの脳裏に 口の端に 逢妻の昭和がセピア色の走馬灯のように巡ります 
喜怒哀楽の違いはあっても どれもこれも懐かしく忘れがたい思い出ばかりです 
逢妻の昭和を体験者の想い出という形のないものから 文章という形あるものに
変えて”おじいちゃんと孫の会話“で語り継ぎたいと思います 
 

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